lete:2000Miles ,Birthday ,Femme Fataleを歌っているクリッシー・ハインド、ビョーク、ニコはとてもアクの強い声で独特の歌い回しをする女性アーティストですが、カバーしにくくはないのですか?
武田:全然やりにくくないです。それがやりにくくないんですよね、私。
lete:素人考えで言ってしまうと、印象に残って真似してしまうというか
武田:そう。それは最初は真似しちゃうんですよ、絶対。でもFamme Fataleはエブリシング・バット・ザ・ガールのトレーシー・ソーンバージョンをやっぱ真似してます。いまだにそうです。でも私彼女の事が大好きだし、彼女の歌は割とそうなりたいなって部分もあるので、それはそれでいいと思っていて。
lete:インスパイアというか
武田:そうですね、で他の曲はライブで演奏しているうちに元々のバージョンっていうものを忘れちゃって(笑)ずーっと歌っているうちにそんなに意識せずとも、自然に忘れて行って。だからやり難い事はないですね。
lete:それは本当に才能だと思います。
武田:いや、考えすぎないから(笑)こうなっちゃうっていうか。
lete:それは訓練してできるようになったのですか?
武田:最初からだと思います。それは。
lete:高音やサビでつい高らかに歌いたくなったりはしないのですか?
武田:あ、します。
lete:そういう時、どうされるんですか?
武田:ライブでそうしてます。レコーディングの時は、高らかに歌うよりは割と抑えて歌う方が好きなので。でもライブの時って抑えられなくなる時があるので、そういう時はもう歌っちゃいます。
lete:自分で聴いて好みだなと思うのは、抑えた方なんですか。
武田:うん。やっぱり曲に合ってるなって思うのはそうですね。あまりやりすぎない方が好みです。
lete:それは石井さんも同じでしょうか?
石井:うーん。それがちょっと変わってきたんですかね。そもそも「抑えめ」とか「高らか」っていう発想では考えたことがないですけど。最近は「高らか」というか歌いあげる方がいいんじゃないって気がする。だからキーが半音上がったりとか。
lete:気が付かれていました?
武田:高らかな方がいいっていうのは気付いてないです。キーは勿論気付いてました。
lete:カバー曲を選ぶ時に好き嫌いの他に基準はあるのですか?
石井:うーんと、一番重要なのはメロディーが強いっていうか、ちゃんとしてるっていうか。それは絶対条件なんでしょうね。
lete:強いというのは
石井:ちゃんといいメロディーだってことですね。
lete:曲の構成やコード進行などは
石井:歌のメロディーだけの話。コードとか構成はアレンジする際に全部変えるから、歌メロが良いか悪いか。基本的にはね。
lete:今回のアルバム「Johnny Cliche」制作の時に、特に気を付けた事があれば教えてください。
石井:そうですね、まず「隙」「間」を作る事ですかね。それでいて濃密な「空気」を作ること。そしてある種の人なつっこさやユーモアや意外性を持った作品にすることでしょうか。
lete:音の響きや曲のコードについては
石井:和音やメロディーといった音の響きは、クリシェ的な安定感と多少の冒険心とのバランスをとりつつ、自分にとって退屈でないようにしましたね。コード(和音)が変わった瞬間に、パッと色が変わるような印象を持てるようにということでしょうか。
lete:TICAを結成してもうじき10年になりますが、長い間モティベーションやクオリティーを保ってこられたのは素晴らしい事だと思います。その理由は何だと思われますか?
石井:そういう風に思ってないもん。
武田:思ってない。いや全然もう。
石井:1ミリも思ってないですね。
lete:1ミリも‥
石井:ええ、ないですね。
lete:ないですか?そのポテンシャルの高さですとか、作品のクオリティーっていうのは素晴らしいと思いますが‥
石井:いや、いつも不満だよね。
武田:そうですね。
石井:たいがい、ま、1年に数回いいライブだったなと思える日があるかないか
lete:そんなに少ないんですか‥
石井:極端に少ないですね。
lete:その欲求不満がまた先の糧に?
石井:うーん、そういう部分は少なからずあるでしょうけれどね。
lete:高い内容をキープされていて素晴らしいと思うんですけど、それは何か自分を支えている源みたいなものが?
石井:根源的なことですよね。何で音楽やってんのって事でしょう。なんでなんでしょうね(笑)この年になると他にできる事ないからっていうのがね、大きな理由を占めてきますけどね。
武田:ふふふ、そうなんですか(笑)
石井:いやでも転職は難しいって(笑)
lete:そうですね(笑)ニューアルバム「Johnny Cliche」の発売を無事終えた訳ですが、振り返ってみて率直な感想をお聞かせ下さい。
石井:今作は1stミニアルバム(No Coast)の無垢な素朴さと、約10年間の活動歴の中で得た経験が、とてもうまく溶け合った仕上がりになりました。TICAとして初めて顔のある作品を作れたと思っています。聴いてくれる方々の心に深く沁みるような作品を目指して作りました。
lete:ああ、そうですね。私は発売日から毎日繰り返して「Johnny Cliche」を聴かせていただきましたが、一曲一曲が心に残っています。本当に素晴らしいアルバムだと思いました。鼻歌はもう当分TICAづくしですよ(笑)
ではアルバム事はこの位にして、次からは少しプライベートな質問をしたいと思います。子供の頃憧れた職業は何でしたか(笑)